馬の上で毎日6時間過ごしているとクオリティーのありがたみを感じるよ。
「プロダクトを作る時は、過酷な状況下でのフィールドテストを必ずやる。」マーク・ボールマンはまるでハンティングロッジに置いてあるような、使った年月の刻み込まれた茶色のレザーソファーに座っていた。ただ、ここはハンティングロッジではなくブルックリン。旧産業地区、インダストリーシティのリノベートされたスタジオだ。「着てるものが過酷な状況でも耐えられるように作られていると知ると、それがブランドに対しての信頼となり、日々の街での生活でも安心して使用できる。」ボールマンは少し考え、「例えば」と続けた。「みんなレンジローバーを世界基準のオフロードカーとして買うでしょ?だけど99%の人はオフロードなんか行かないんだ。過酷なオフロードを耐えられるのであれば、日々の街の環境は余裕で走れるだろうって思うわけだ。」
Mark Bollman
Founder of Ball and Buck
ロケーション
ニューヨーク、ブルックリン
「着てるものが過酷な状況でも耐えられるように作られていると知ると、それがブランドに対しての信頼となる。」
アトランタ出身のボールマンはボストン、ニューヨーク、バークシャイヤーマウンテンの自宅を行き来している。彼はMade in USA のみを扱うハンティングやフィッシングを愉しむ紳士の為のライフスタイルブランドBall and Buck(ボールアンドバック)のCEO/創設者である。具体的にどんな仕事をしているのか聞いてみると「全て」と答えた。ボールアンドバックの目標について問うと、「この惑星で最もクオリティーの高いプロダクトを作ること」と答えた。冗談には聞こえなかった。ボールマンの信念の根底にはクオリティーの探究がある。それについて彼は「クオリティーのありがたさを過酷な環境で体験してきた」と語り、「廉価の商品や少しコストカットしたような物を買って失敗してきた経験もある」と付け加えた。ボールマンはプロダクトが年を重ねるごとに良くなる必要があることも語った。「年数を重ねるごとに良くなるのは必須条件だ。買ったその日にボロが出るようなプロダクトを着ていたら、その日に人生最大の大魚が釣れるようなイベントは起きないと思う。」
ボールマンは幼少期からハンティングやフライフィッシング、乗馬をしてきた。過去25年間、彼の家族はモンタナ州のNine Quarter Circle Ranch に毎年訪れては、彼曰く、「アウトドア生活」をしている。また、ビジネスや冒険、祖父と毎年行っていたハンティングの旅でも、なんでも没頭してできるのは彼の才能だ。ボールマンの幼少期からの体験がボールアンドバックを作り上げた。「ブーツの中に水が入ってくるのは本当に不愉快だってことはすぐに気づいた。」
ボールアンドバックの他にボールマンはAmerican Fieldの創設者でもある。American Field はMade in USA の生産者が商品を直接売れる市場のようなもので、世界中の人々へ自分たちのブランドをアピールできる生産者にフォーカスした2日間のイベントだ。2012年に立ち上げたばかりだが急激に成長し、現在ではボストン、ナッシュビル、アトランタ、ワシントンDC、サンフランシスコ、ブルックリンで展開するようになった。
「アメリカは物作りには素晴らしい環境だ」とボールマンは語る。「アメリカがアメリカであることの中核でもある。クラフツマンシップ。創造すること。構造の理解。モノ作りがあったからこそ、この国ができた。革やラバー、針、リベットがあればブーツが出来てしまう。アメリカの歴史という織物にはモノ作り精神や姿勢が縫い込まれている。これらが自分を形成する要素にもなっている。」Made in USA へのこだわりがボールマンの意欲を突き動かしている。「ボールアンドバックとダナーのようなブランドにとって卓上でコレクションを考えているわけではないし、コレクションに何ルック必要かなんていうルールもない。使いたいものがあるから、イノベーションを起こさないといけないから、解決しなければならない問題があるから作る。ボールアンドバックがジーンズを初めて作ったわけではないが、既存のジーンズを打破できるよう挑戦している。最高のジーンズが出来上がるまで設計と改良を繰り返している。」
「アメリカがアメリカである事の中核でもある。クラフツマンシップ。創造すること。モノ作りがあったからこそ、この国ができた。」
ボールマンは意識的な消費をすることについて熱く語った。未だかつてない程に人々は買う物の生産背景を知ることが出来るようになり、「人々は消費を減らし、品質の高い物を買うようになった」とボールマンは語る。「消費する為に買うのではなく、『自分のワードローブに投資するんだ。これから5年、いや10年履けるブーツの為に投資をするんだ』と言う人が増えた。」
ボールマンに仕事の理念を聞くと、少し考えてから語った。「シンプルにいうと。。。クオリティー、オーセンティックであること、そして信頼かな。ハンティングに出かけるときは何を履いてきても良いわけではない。その履いている一足を信頼できるか自分に問わなければならない。ニューヨークでもそう考えている。家を一歩出たらそこは外の世界なんだ。」